2015年05月19日

第4章 テクニカル分析実践:フィボナッチ(リトレースメント、エクスパンション)

■フィボナッチ(リトレースメント、エクスパンション)

●フィボナッチの構成(算出方法)や意味

フィボナッチ(Fibonacci)とは、「フィボナッチ数列」より導きだされる比率を利用して、相場がどこまで動くのか、という価格ターゲットを算出する方法です。

「フィボナッチ数列」とは以下のような数列のことです。

1 , 1 , 2 , 3 , 5 , 8 , 13 , 21 , 34 , 55 , 89 , 144 ・・・

「フィボナッチ数列」には次のような特徴があります。

①  隣り合う数字を足すと、その次の数字となる

 ⇒1+1=2 , 1+2=3 , 2+3=5 , 5+8=13 , 8+13=21 , 13+21=34 , 21+34=55 , 34+55=89 , 55+89=144・・・

②連続する2つの数字を使い、小さい数字を大きい数字で割ると、「0.618」に近づいていく

 ⇒1÷1=1 , 1÷2=0.500 , 2÷3=0.667 , 3÷5=0.600 , 5÷8=0.625 ,

 8÷13=0.615 , 13÷21=0.619 ,21÷34=0.618 , 34÷55=0.618 ,

55÷89=0.618 , 89÷144=0.618 ,・・・

③連続する2つの数字を使い、大きい数字を小さい数字で割ると、「1.618」に近づいていく

 ⇒1÷1=1 , 2÷1=2.000 , 3÷2=1.500 , 5÷3=1.667 , 8÷5=1.600 ,

  13÷8=1.625 , 21÷13=1.615 ,34÷21=1.619 , 55÷34=1.618 , 89÷55=1.618 , 144÷89=1.618 ,・・・

④小さい意数字を2つ上位の数字で割ると、「0.382」に近づいていく

 ⇒1÷2=1.000 , 1÷3=0.333 , 2÷5=0.400 , 3÷8=0.375 , 5÷13=0.385 ,

 8÷21=0.381 , 13÷34=0.382 , 21÷55=0.382 , 34÷89=0.382 ,

55÷144=0.382 ,・・・

①~④以外にも関係性はありますが、トレードに利用するにあたっては、「0.382」「0.618」「1.618」が最も重要な比率となります。

 

これらは「黄金比」や「黄金分割」と呼ばれ、カタツムリの渦の広がり方や星雲の形状など、自然界にはこの比率に従っているものが多く、エジプトのピラミッドやミロのビーナスなどもこの比率で設計されているといわれています。

 

一方、相場も自然界の一部である人間により作られています。フィボナッチによるテクニカル分析は、マーケットの値動きも自然現象の一部ととらえ、複雑に見える動きのなかに普遍的な秩序を見出そうとするアプローチであると言えます。

 

フィボナッチは価格ターゲットを算出するのに使用されますが、トレンド終了後にどれだけ戻るかのターゲットを出す「フィボナッチリトレースメント」と、トレンド終了後、次のトレンドがどこまで伸びるかのターゲットを出す「フィボナッチエクスパンション」の2つが、FXのトレーダーにはよく利用されています。

 

●フィボナッチの見方

前記にて紹介したように、「フィボナッチリトレースメント」と「フィボナッチエクスパンション」がよく利用されていますので、これらの見方を紹介します。

①フィボナッチリトレースメント

「フィボナッチリトレースメント」は、トレンド終了後にどれだけ戻るかのターゲットを出す方法です。先ほど紹介した「0.382」「0.618」を使い、それまでのトレンドの高値と安値の値幅の38.2%と61.8%を戻しのターゲットとして算出します。補足的に半値戻しの50.0%もよく利用されます。

 チャート上で任意の高値と安値を指定すると、高値と安値の値幅の38.2%、50.0%、61.8%の価格にラインが描かれます。この3つのラインが戻しの価格ターゲットとなりますが、トレンドが強い時は戻しが小さいので38.2%、トレンドが弱い時は戻しが大きいので61.8%が目安になります。

図①

フィボナッチリトレースメント 

図では38.2%ライン近辺でサポートされ戻しが終了しています。このように、フィボナッチリトレースメントのラインでサポートされたり、ラインに到達して戻しが終了するケースが多いです。

なお、相場では経験的に3分の1戻し、半値戻し、3分の2戻しがよく起こると言われていますが、3分の1は38.2%、半値は50.0%、3分の2は61.8%に近い値ですので、これらもフィボナッチと同様の考え方に基づいていると言えます。

②フィボナッチエクスパンション

「フィボナッチエクスパンション」は、トレンド終了後、次のトレンドがどこまで伸びるのかというターゲットを出す方法です。フィボナッチ比率の「0.618」「1.618」を使い、基準となるトレンドの値幅の61.8%、161.8%を価格ターゲットとして算出します。補足的に100.0%もよく利用されます。

チャート上で、基準のトレンドとして任意の安値A、高値Bとその後の戻り安値Cの3点を指定すると、安値Aと高値Bの値幅の61.8%、100.0%、161.8%の値幅を、戻り安値Cに加えた価格にラインが描かれます。

図②

フィボナッチエクスパンション 

図では161.8%ラインを越えた価格帯でトレンドが終了していますが、61.8%ラインでも反転したりサポートされたりしており、レジスタンスラインやサポートラインとして機能していることがわかります。

このように、フィボナッチエクスパンションのラインがサポートやレジスタンスとなり、ラインに到達してトレンドが終了するケースが多いです。

なお、価格ターゲットを算出する方法として「N計算値」がありますが、フィボナッチエクスパンションの100.0%ラインは、「N計算値」と同じ方法で計算されています。「N計算値」では目標価格は一つだけですが、フィボナッチエクスパンションでは上下に61.8%、161.8%ラインがあるので、ある程度のブレを想定した方法と言えます。

●フィボナッチの使い方

ここまでフィボナッチの計算方法や見方の紹介をしてきましたが、ここでは実践的な使い方の紹介を行います。

①利食いの目標価格として使う(売買サインとしてのフィボナッチの活用)

「フィボナッチリトレースメント」の38.2%、50.0%、61.8%ライン、「フィボナッチエクスパンション」の61.8%、100.0%、161.8%ラインを、それぞれ第一目標、第二目標、第三目標として、利食いの目安に使います。第一目標で全てのエントリーポジションを決済してもよいですし、第一目標で半分決済、第二目標でさらに半分を決済、第三目標で残りを決済、といった分割決済にも使えます。

図③

フィボナッチリトレースメント 

図④

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィボナッチエクスパンション 

①  エントリーの準備に使う(環境認識としてのフィボナッチの活用)

「フィボナッチリトレースメント」の38.2%~61.8%のゾーンに価格がある時は、戻しが終了して新規のトレンドが発生する可能性があるので、買いエントリーの準備をします。

「フィボナッチエクスパンション」の61.8%~161.8%のゾーンに価格がある時は、トレンドが転換する可能性があるので、売りエントリーの準備をします。

図⑤

フィボナッチリトレースメント 

図⑥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィボナッチエクスパンション 

●フィボナッチを利用したトレードルールサンプル

ここではフィボナッチを利用したトレードルールのサンプルを紹介します。

ルールは基本的に、現在動いている足の1本前を基準に判断していきます。以下のルール例では、フィボナッチのターゲットを終値で達成したときにエグジットする方法を記載しており、現在動いている足は変動を続けているため、終値が確定しておらず、サインとして採用するには不十分だからです。

①フィボナッチリトレースメントを利食い目標としたルール例

買いポジションの利食い:

2本前の価格<38.2%ライン、かつ、1本前の価格≧38.2%の時、

ポジションの半分を決済

2本前の価格<50.0%ライン、かつ、1本前の価格≧50.0%の時、

残りの半分を決済

2本前の価格<61.8%ライン、かつ、1本前の価格≧61.8%の時、

残り全てを決済

売りポジションの利食い:

2本前の価格>38.2%ライン、かつ、1本前の価格≦38.2%の時、

ポジションの半分を決済

2本前の価格>50.0%ライン、かつ、1本前の価格≦50.0%の時、

残りの半分を決済

2本前の価格>61.8%ライン、かつ、1本前の価格≦61.8%の時、

残り全てを決済

図⑦

フィボナッチリトレースメント

②フィボナッチエクスパンションを利食い目標としたルール例

買いポジションの利食い:

2本前の価格<61.8%ライン、かつ、1本前の価格≧61.8%の時、

ポジションの半分を決済

2本前の価格<100.0%ライン、かつ、1本前の価格≧100.0%の時、

残りの半分を決済

2本前の価格<161.8%ライン、かつ、1本前の価格≧161.8%の時、

残り全てを決済

売りポジションの利食い:

2本前の価格>61.8%ライン、かつ、1本前の価格≦61.8%の時、

ポジションの半分を決済

2本前の価格>100.0%ライン、かつ、1本前の価格≦100.0%の時、

残りの半分を決済

2本前の価格>161.8%ライン、かつ、1本前の価格≦161.8%の時、

残り全てを決済

図⑧

フィボナッチエクスパンション

①  フィボナッチリトレースメントによるエントリー準備のルール例

買い準備:38.2%ライン>1本前の価格>61.8%ラインの時、買いエントリーの準備をする

売り準備:38.2%ライン<1本前の価格<61.8%ラインの時、売りエントリーの準備をする

 図⑧

フィボナッチリトレースメント

①  フィボナッチエクスパンションによるエントリー準備のルール例

買い準備:61.8%ライン>1本前の価格>161.8%ラインの時、

買いエントリーの準備をする

売り準備:61.8%ライン<1本前の価格<161.8%ラインの時、

売りエントリーの準備をする

図⑨

フィボナッチエクスパンション

 なお、上記のルールサンプルでは「価格」という表現を用いていますが、この価格の部分を「終値」や「高値」、「安値」などで定義していくことで、そのルールの意味合いが変わってきます。終値をルールとして用いる場合は、終値を確認した時点でのエントリーやエグジットの判断となりますが、高値や安値を用いる場合には、指値注文等を設定することにより、価格がそのポイントに到達した時点でのエントリーやエグジットが可能になります。

終値を用いて判断するのか、それとも高値や安値を用いて判断するのかは、そのトレーダー自身が何を目的とするかによっても異なりますし、それぞれにメリットとデメリットがあります。これらの考えは、この後に紹介する2つの「目標価格を計算する方法」である、「N計算値、E計算値」、「ピボット」に関しましても同様の考え方となりますので、自分のターゲットに合わせて検討してみてください。

(チャート出所:FXCMジャパン証券株式会社 Trading Station)

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(ライター:104m)