2015年05月04日
■東京市場、欧州市場、NY市場の値動きの違い
●東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場について
為替取引は取引所での取引は殆どなく(一部ありますが割合は非常に小さい)、銀行間で取引するインターバンク市場が中心となっています。インターバンク市場での取引は世界中で24時間行われているため、インターバンクレートを参考にするFXの取引は24時間取引可能ですが、時間帯ごとに東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場などと呼ばれています。
これは、各地域が昼間の時間帯にその地域での取引高が大きくなるためですが、取引の中心となる地域や都市名をさして○○市場と呼ぶのが慣習になっています。
東京、ロンドン、ニューヨーク以外には、オセアニア市場やシンガポール市場、フランクフルト市場、中東市場、ロシア市場などもありますが、東京、ロンドン、ニューヨークの3市場で一日の為替取引高の殆どを占めますので、これら3つの特徴を知ることが、特にデイトレードを行う上では大切になります。
以下に各市場の中心都市の時間帯を示します。各市場の7時~17時の取引が多く、この時間帯を○○市場と呼ぶことが多いです。その中でも経済指標の発表が多く行われる8時~10時の取引が特に多くなります。
なお、例えば東京市場では日本円関連の取引が多いなど、各市場の中心となる都市に近い地域の通貨の取引高が多くなる傾向があります。
●東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場の特徴
ここでは3市場の特徴を紹介します。
①東京市場
東京市場は通常、値動きが小さく、逆張りのトレーダーが中心となるため、レンジ相場になることが多いです。また、日本円だけでなく、午前中はオセアニア市場とも重なるため、豪ドルやNZドルの値動きも大きくなります。
日本時間9時55分は「仲値」という、銀行が顧客向けレートの基準価格を決定する時間になるので、企業などの決済がらみの大口の取引が入りやすく、急激な値動きが起こることがあります。
②ロンドン市場
ロンドン市場は東京市場の午後とニューヨーク市場の午前と重なるので、3市場の中でも最も取引高が多くなります。また、投機的な取引が多く、東京時間に発生したポジションのストップ注文を狙った動きもよく起こります。この時間帯はユーロや英ポンド、スイスフランなどの欧州通貨の値動きが大きくなります。
ロンドン時間16時(日本時間1時:標準時)は「ロンドンフィキシング」という、金のスポット価格を決定する時間になります。金は米ドル建てで取引されますので、米ドルの需給に大きな影響を与えます。このため、ロンドンフィキシングの時間帯には大口の取引が入りやすく、急激な値動きが起こることがあります。
③ニューヨーク市場
ニューヨーク市場は午前にロンドン市場と重なり、ロンドン市場の次に取引高が多い市場になります。米国の経済指標やニュースが多く発表されるため、値動きは非常に大きく、今後の中長期的な相場の方向性を決めるような値動きになることが多いです。なお、午前(日本時間21時から翌2時:標準時)の取引は活発ですが、午後になると一転して閑散とした取引になるのも特徴です。この時間帯は米ドルやカナダドルなどの北米通貨だけでなく、全ての通貨の値動きが大きくなります。
ニューヨーク時間10時(日本時間24時:標準時)は「オプションカット」という、通貨オプション取引の決済期限となる時間になります。ニューヨーク市場では通貨オプションの取引が活発なので、オプションカットの時間帯には為替相場にも大口の取引が入りやすく、急激な値動きが起こることがあります。
以下のグラフはユーロ/米ドルの2011年一年間の時間帯ごとの値動きを示しています。
ニューヨーク市場、ロンドン市場の8時から10時の間の値動きが大きくなっています。東京市場の値動きが小さいのは、東京から地理的に離れたユーロと米ドルの交換レートであり、他の市場と比べると取引が少ないためです。
●東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場の特徴を利用したトレード
ここまで東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場の特徴を紹介してきましたが、ここでは実践的な使い方の紹介を行います。
①東京市場の逆張りトレード(環境認識としての活用)
東京市場はレンジ相場になりやすいという特徴を利用し、逆張りのトレードを行います。
時間帯は8時~15時(標準時)が目安となります。7時~8時は流動性が低く、スプレッドが広がりやすいのでトレードには向きません。15時までとしているのは、15時以降は欧州のトレーダーが参加して急な値動きが起こる可能性があるためです。通貨ペアはユーロ/米ドル、ユーロ/英ポンド、ユーロ/スイスフランなど東京市場で動きにくいものを選びます。
②ニューヨーク市場午前の順張りトレード(環境認識としての活用)
ニューヨーク市場の午前は一日の中で最も値動きが大きく、ニューヨーク市場の値動きが中長期的な値動きに繋がりやすいという特徴を利用して、順張りのトレードを行います。
時間帯は22時~翌2時(標準時)が目安となります。22時はニューヨーク市場の8時であり、これから値動きが大きくなる時間帯になります。翌2時までとしているのは、2時以降はニューヨーク市場の午後にあたり、値動きが小さくなるためです。通貨ペアは、ユーロ/米ドルなどニューヨーク市場で特に動きやすいものを選びます。
③レジスタンス、サポートラインとして使う(売買サインとしての活用)
東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場にはそれぞれの地域のトレーダーがおり、売買を日々繰り返しています。このため、一つ前の市場の高値や安値には、それ以前の市場で入れられたストップ注文が多く存在しています。
これを利用して、前の市場の高値、安値をサポートやレジスタンスラインとして使うことができます。以下の図は東京市場でニューヨーク市場の安値をサポートラインとして見て、サポートライン近辺での反転を確認して買いエントリーしています。
東京市場はレンジ相場になりやすいので、この方法が有効なことが多いです。
④具体的な売買ポイントを決める(売買サインとしての活用)
一つ前の高値や安値には、それ以前の市場に参加していたトレーダーたちが持つポジションのストップ注文が多く存在していますので、前の市場の高値や安値のブレイクアウトをエントリーポイントとすることができます。また、レンジの反対側を損切りポイントとすれば、レンジ幅の○倍を利食いポイントと設定することもできます。下図ではレンジ幅と同じ値幅で利食いしています。
この方法は、取引高が最も多いロンドン市場のレンジを使い、トレンドの出やすいニューヨーク市場の午前でのブレイクアウトのみを採用すると、利益を上げる確率を高くすることができます。
●東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場の特徴を利用したトレードルールサンプル
ここでは東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場の特徴を利用したトレードルールのサンプルを紹介します。ルールは基本的に、現在動いている足の1本前を基準に判断していきます。これは、現在動いている足は終値が確定していないので、各種のテクニカル指標も変動を続けており、サインとして採用するには不十分だからです。
①東京時間はレンジ相場を想定した逆張りトレードのみを行うルール例
標準時(冬時間):11月頃~3月頃
8時~15時の間は、レンジを想定した逆張りトレードのみ行う。
サマータイム:4月頃~10月頃
7時~14時の間は、レンジを想定した逆張りトレードのみ行う。
②ニューヨーク時間午前中はトレンドを想定した順張りトレードのみを行うルール例
標準時(冬時間):11月頃~3月頃
22時~翌2時の間は、トレンドを想定した順張りトレードのみ行う。
サマータイム:4月頃~10月頃
21時~翌1時の間は、トレンドを想定した順張りトレードのみ行う。
③ニューヨーク時間午前中にロンドン市場のレンジブレイクトレードを行う
ルール例
エントリー可能時間
22時~翌2時(標準時)、21時~翌1時(サマータイム)
ロンドン市場のレンジ
16時~22時(標準時)、15時~21時(サマータイム)の高値と安値を
レンジとする。
買い:2本前の価格≦レンジ高値で、かつ、
1本前の価格>レンジ高値のとき買いエントリー
2本前の価格>レンジ安値で、かつ、
1本前の価格≦レンジ安値のとき損切りエグジット
2本前の価格<(レンジ高値+レンジ幅)で、かつ、
1本前の価格≧(レンジ高値+レンジ幅)のとき利食いエグジット
売り:2本前の価格≧レンジ安値で、かつ、1本前の価格<レンジ安値のとき
売りエントリー
2本前の価格<レンジ高値で、かつ、1本前の価格≧レンジ高値のとき
損切りエグジット
2本前の価格>(レンジ安値-レンジ幅)で、かつ、
1本前の価格≦(レンジ安値-レンジ幅)のとき利食いエグジット
(チャート出所:FXCMジャパン証券株式会社 Trading Station)