2015年12月24日
歴史と市場
「歴史は繰り返す」というのは、ローマの歴史家クルチュウス・ルーフスの言葉であり、「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」というのは、ドイツの宰相ビスマルクの言葉です。
金融市場においても例外ではなく、価格の動きは市場の歴史を作り、それは繰り返されます。また世界の歴史において、重要な出来事が起こった時に、市場は一定の反応を見せます。世界の歴史上の出来事と、その時期の市場の反応を振り返ることにより、投資家は大きな力を得ることができます。このコーナーでは、世界の歴史上の出来事と市場の関係について振り返って、考察を加えていきます。
歴史と市場 第2回 「911米国同時多発テロ」 2001年9月11日
2001年9月11日、私は仕事を終えて帰った自宅のリビングで、テレビに映った映像を呆然とみていた記憶があります。既に私がテレビのスイッチを入れた時点で、一機目の旅客機がNYのワールドトレードセンタービルに突っ込んだ後でした。その映像を見て、映画か何かの特撮ではないのかと思ったことを覚えています。そして、二期目の旅客機は私がテレビを見ている中で、もう一棟のビルに突っ込み、やがてビルが倒壊していくのを何も考えられずに見ていました。
同年2月に、初めて株式投資を開始した私は、このテロ当日に数百万円の株式を保有していました。中継映像を見ながら、何が起こっているのか全く理解できないながら、翌日の市場のことを考えました。その時に考えたことは、「何が起こっているのか理解できない以上、株式を保有することはできない。全てのポジションを寄付きで決済しよう。」というものでした。そして翌日、寄付きにて全ての買いポジションを決済しました。
米国株式市場は9月11日の取引を停止、その後、休場が続き翌週17日(月)から取引を再開しました。取引が再開した9/17はテロが起こる前日9/10に比べて685ドル安、7.3%に暴落となりました。その後、9/21安値まで1週間の下落、9/10終値から9/21安値までの下落幅は1,543ドル、16.1%の下落でした。その後、NYダウ平均株価は上昇を開始し、2002年3月まで上昇、この後、再び下落を開始し、2002年7月に2001年9月安値を再度切り下げる値動きを形成しました。日経平均株価はテロ翌日の9/12にマイナス683円、6.6%の下落となりました。その後、9/21まで下落した後上昇を開始、11月まで上昇します。その後再び下落、2002年2月に2001年9月安値を切り下げますが、すぐに上昇、2002年5月まで2001年11月高値を切り上げる上昇を見せます。
NYダウ平均株価 日足 2001/2/16~2002/5/2
日経平均株価 日足 2001/3/26~2002/3/29
2001年の株式市場は、1999年から2000年にかけて起こったITバブルの崩壊により、下落が続いていました。その過程で、世界の金融市場の中心の米国、しかもNYのど真ん中の象徴的なビルを狙ったテロは、世界がそれまでに全く経験したことのない悲劇でした。当時の私は、株式投資1年生のひよっこであり、「自分が理解できない事態は許容できない」ということしか考えることはできませんでした。今、振り返ってみると、長期ダウントレンドの中で迎えたテロの当日には、今の私であれば買いポジションは保有していないと思います。振り返ることで、見えてくるものは確かにあるものです。
このような悲劇は、世界のどこであったとしても二度と起こって欲しくない衝撃的な出来事でした。
チャート出所:「Edge Trader」 インベストメントテクノロジーズ(株)