2015年06月30日

投資家の診療所 vol4 「トレードサイズにこだわらなければ、利益は安定しない」

本コーナーでは、独学で奮闘を続ける個人投資家と実際にお話をする中で、その人の問題点を浮き彫りにし、解決策の提案や指導を行います。相談者が抱える問題は共通している部分が多く、多くの個人投資家の参考になるはずです。自分では気づけていない課題や解決策を、当クリニックの相談例を見ながら解消していただければと思います。

 

「トレードサイズにこだわらなければ、利益は安定しない」

 

今月の相談者:遠藤さん(仮名)、男性、FX投資歴 4年

診断結果:トレードサイズ機能不全、トレンド認識欠乏症

 

 

「トレードサイズが最大の問題点」

 

松下:現在のトレードの状態を教えてください。

 

遠藤:これまで試験的に2つのルールで運用してきました。1つのルールは、2013年には調子よく利益を上げられたのですが、2014年に入ってわずか3週間で、過去の最大ドローダウンの2倍まで達してしまいました。また数年前に、松下さんの『FXサイクル投資法マスターブック』(ダイヤモンド社 刊)を買って、サイクルを使ったルールでトレードしたところ、ドローダウンが少なく、利益も上がっていますので、サイクルを使ったルール1本に絞ろうと思っています。

 

松下:FXを始めてからの経緯を教えてください。

 

遠藤:2010年10月に、何となく米ドル/円の買いからFXを始めましたが、ずっと損失に苦しみました。2011年に見せた急激な上昇(円安)で、助かるかと思いましたが、また下落を開始し損失が膨らみました。そこで、しっかり学ばなければダメだという思いに至り、勉強を始めました。

松下:ご自身のトレードにおける悩みは何でしょうか?

 

遠藤:トレンドの見極めです。何を見てトレンドを判断したらいいのかが分かりません。中長期のサイクルの観察を続けていると、大まかな市場の流れは分かってくるのですが、エントリーのタイミングで迷ってしまいます。

 

松下:ご自身のトレードの問題点を1つ挙げるとすれば何ですか?

 

遠藤:サイクルに重点を置くあまり、日柄ばかりに目が向いてしまい、「待つ」ということができていないと思います。エントリーのポイントも、環境認識が甘いために精度が低くなっていると思います。

 

松下:私がまず遠藤さんの売買履歴を見て問題だと感じた点は、トレードサイズのアンバランスでした。複数の通貨のトレードが混在する中で、ボラティリティ(価格変動率)の高い通貨も低い通貨も同じトレードサイズでトレードされているため、ルールが機能したことで利益が上がっているのか、機能せずに損失となっているのか、その判定ができないのです。

 

例えば、英ポンド/円とNZドル/円の両方を1万通貨でエントリーし、英ポンド/円のトレードが損失に終わり、NZドル/円のトレードが利益につながったとしても、合計するとマイナスになってしまうことになりかねません。国内のほとんどの個人投資家は、トレードサイズの決定に大きな注意を払っておらず、それはトレードのパフォーマンスを安定させる上で、致命的な問題なのです。

 

私が推奨するトレードサイズの算出方法は、損切りポイントを決めた上で、各トレードの損失額が一定になるように、トレードサイズを算出するという方法です。

 

この方法を採用すると、損切り時の損失額がほぼ一定となり、損失のコントロールが可能になります。ボラティリティの高い通貨はサイズが小さくなり、ボラティリティの低い通貨はサイズが大きくなりますので、想定利益のバランスも整合性が保たれるようになります。遠藤さんは、既にトレードルールを確立しつつありますので、トレードサイズにも整合性を持たせることができれば、より精度の高い過去検証や試験運用が可能になります。この点を、今後の1つの課題として、何らかの基準=ルールを作るようにしてください。

 

遠藤:これまでは単に損切り時の損失金額から逆算し、全てのトレードを最少ロットで行っていましたが、トレードルールの評価ができないのは理解できますので、何らかのルールを考えるようにします。

 

 

「不利な環境下でのトレードを排除する」

 

松下:提出していただいた、損失に至ったトレードポイントをチャートに転記してみましたが、このトレードをどのように振り返りますか?(事前課題として取り組んでいただいた豪ドル/円の3回のトレードポイントを確認しました。)

 

遠藤:結果的にダウントレンドの中で買いを繰り返しており、トレンドの認識が弱いと思います。これが私の1つの大きな課題なのですが、どうすればいいのでしょうか?

 

松下:サイクル論だけではトレンド認識が難しいので、他のテクニカル指標も加えてトレンド認識のルールを決めます。トレンド認識のルールが決まれば、それに合わせてより有利な環境と不利な環境を選別できますので、不利な環境でのトレードを排除していけばパフォーマンスが向上します。

 

遠藤:どうすれば不利な環境でのトレードを排除できますか?

 

松下:トレンド系のテクニカル指標、例えば移動平均線などを使った、1つの判断基準を確立します。それにより、アップトレンドかダウントレンドかを識別できますので、アップトレンドでは買いを行うが、ダウントレンドでは買いを見送るということを実践すれば、不利な環境下でのエントリーを排除できます。これは全体のトレード回数を減少させることにつながり、無駄なトレードを省くことでトレードのパフォーマンスアップにつながります。

 

遠藤:サイクルをカウントしながら転換点を待っている際に、反発を見ると、ついエントリーしてしまうことがあるのですが、強い反発のサインは何でしょうか?

 

松下:下落から上昇に転じる際の、最初に現れる変化は、陰線の連続から陽線の連続への変化です。しかし、単純に陽線が連続して出現したからといって、全てのケースにおいて買いエントリーを行うことはできませんので、前述のトレンド認識のルールも決めて、過去のチャートで様々なパターンを確認・検証することが必要です。

 

遠藤:サイクルを使ったルールでは、利益を上げる自信が出てきたのですが、何か注意することはありますか?

 

松下:サイクル論を使ったトレードは、ブル(強気)相場において有効ですが、ベア(弱気)相場ではブル相場ほどの優位性を発揮できません。事実、2008年のリーマンショック以降、世界の金融市場はブル相場の傾向を続けていますので、サイクル論が有効に機能し、利益を上げることができています。しかし、いつかまた長く大きいベア相場が訪れた時のために、トレンド認識によるトレンドフォローのトレードを準備しておくことが必要です。

 

トレード理論やテクニカル指標には、有効性が高く得意とする環境もあれば、有効性が低く苦手とする環境もあります。得意とする環境にばかり目を奪われていると、苦手とする環境が訪れた時に、資金を減らすばかりで、何の手立てもできなくなってしまいますので、敢えて苦手とする環境を知り、それを補う手法や対応方法を準備しておくことが大切です。

 

【遠藤さんへの処方箋】
1.トレードサイズ算出ルールの確立
2.テクニカル分析によるトレンド認識
3.トレンド認識からのトレードの選別

(FX攻略.com2014年10月号掲載)

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(ライター:104m)